コツコツ読書ブログ

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【感想】名前のない生きづらさ (著:野田彩花, 山下耕平)

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今回ご紹介するのは、「名前のない生きづらさ」です。

名前のない生きづらさ

 

目次
・基本情報

・この本を読もうと思ったわけ

・内容紹介

・この本で学んだこと

・まとめ

「名前のない生きづらさ」の基本情報

出版社 ‏ : 子どもの風出版会
発売日 ‏ : 2017/3/15
単行本(ソフトカバー) ‏ : 250ページ
ISBN-10 ‏ : 4909013016

“ナマモノ”に価値はない?

生産性が重視されるこの社会で、私のような「何もしていない」存在は、いないほうがいいのだろうか。

「生産性のない」と断じられた存在は、生きていてはいけないのだろうか。

そういうまなざしは、人間が“ナマモノ”であることを忘れろ、許すなと言っているようで、私にはずいぶんと苦しいことに思える。

野田/彩花

小学校3年生より学校に行かなくなり、中卒後は進学せず、家で過ごしていた。

19歳のときにNPO法人フォロの運営するコムニタス・フォロ(現在は「なるにわ」と名称変更)に通いはじめ、現在にいたる

山下/耕平

1973年、埼玉県生まれ。

大学中退後、フリースクール東京シューレ」スタッフ、『不登校新聞』編集長を経て、現在はNPO法人フォロ事務局長、全国不登校新聞社理事、関西学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「名前のない生きづらさ」を読もうと思ったわけ

利用している居場所のスタッフさんから勧められたのがきっかけです。

調べたら絶版になっていたので図書館で取り寄せました。

とても面白かったので、Amazonで買って2回読みました。

「名前のない生きづらさ」の内容紹介

1.無理に何者かである必要はない

「何者でなくてもいい」とか「オトナであることから降りる」ということはつまり、「名前のない領域」を手放さずに引き受けていくことだと思う。

そこで自分をごまかさずに、えんえん答えの出ない問いと向き合い続ける。

それはたぶん、いろんなことの境界線上に立ち続けるということだ。

どちらがいいとか悪いとか、正しいとかまちがっているとか、正常とか異常とか、病んでいるとかそうでないかとか、一度はじめてしまったらキリがない分断線を引きたがるその手を、心を、ぐっと堪えて見つめ続けること。(P.52)

私は「部分的に魂を売る」と言っているんですが、ぜんぶ魂を売るか、まったく売らないかではなくて、部分的に魂を売って、この社会と折り合いをつけていく。

そういう大人のあり方もあるんじゃないかと思うんですね。

ズレを無視しないで、「子ども」を保ったまま、「大人」の仮面もかぶる。(P.238)

僕は現在ひきこもりみたいな生活を送っており、履歴書上は「無職」です。

精神障害者手帳も持っており、行政の区分では「障害者」です。

昔はそういう名前・肩書を得て安心したかったり、働けないことに対して、親や世間に言い訳したい気持ちもありました。

でも最近は無職や障害名は、自分の一つの面にすぎないと思っています。

人間はもっと多面的・立体的で、濃淡もある。

名前があれば楽ですが、名前に逃げず、納得いくまで自分自身と向き合いたいと今は思っています。

僕は子どもの頃からスポーツとかテストが苦手でした。

人と比べたり、比べられることが嫌でしょうがなかった。

きれいごとかもしれないけれど僕には変に潔癖なところがあって、そういうものだと割り切れなかったり、適度に汚れることができません。

それが僕にとってのズレであり、生きづらさなのです。

でもこの本を読んで、そういう心を持ったまま、大人としてやっていく方法もあるのかなと考えました。

自分のズレをなかったことにせず、ごまかさず、自分に正直に生きたいです。

2.自分に主軸を取り戻す

「カウンセラー」「医者」「支援者」、相手を自分にとって何をしてくれる存在か、つまりは役柄で捉えているうちは、関係は仮のままというか、どこか緊張をはらんだものになってしまいがちだと思う。

役柄を超えて、あざやかに個人が立ち上がってくる瞬間、私はようやく、ほんとうの意味で相手と「出会えた」気がするのだ。(P.87)

最初は医者も薬も、緊急の逃げ込み先みたいなものだったのだから。

そこから、医者とどのように関係をつくっていくのか。

投薬のことも、すべてを医者にまかせるんじゃなくて、私は自分がどうしたいのか、問い直していくことが必要だったのだ。(P.88)

僕は15年以上、精神科に通っています。

友人や社会とのつながりがなく、精神科しか頼れる場所がありませんでした。

薬もなんで飲んでいるのかよく分からないまま、そういうものだからと受け入れてきました。

これまで色々と呑み込んできたものを思い出して、「ああそうか」とはっとしました。

今の自分に必要なのは、人薬なんだって。

肩書ではなく「対人」の目線で、色んな人と触れ合って気づきを得たい。

病院とか患者という肩書に逃げずに、ありのままの自分を大切にしたい。

それが僕にとっての回復なんだと思います。

3.他者とつながる

往復が必要なんだと思います。

どっちかだけでは成り立たない。

ですから、これからも、ズレつつ、往復しつつ、そこから水脈を探って、いろんな人とつながっていけたらなと思います。(P.244)

けれど、学校へ行っていなくても、働いていなくても、なんだかよくわからないまま生きづらくても、人といっしょに考えていくなかで、自分で自分を引き受けていくことはできると思っています。

むしろ、人といっしょに考えていくことでしか、自分を引き受けることはできないし、いっしょに考えないかぎり、ほどけていかない思いが誰のなかにもあるのかもしれません。(P.247)

僕は長年ひきこもり生活をしてきて、「自分対自分」の関係に疲れてきました。

ずっと自分を抱えて生きるのはしんどいです。

自分探しって自分をとことん掘り下げていくことだと思っていましたが、限界もあります。

最近は自分なりのやり方で、他者や社会とつながることを考えるようになりました。

イスラエルのニュースに胸を痛め、先日募金をしました。

僕はネットやリモートなど、遠距離で人と繋がるのが好きです。

自分なりの距離感を大切にして、人と関わりたいと思います。

「名前のない生きづらさ」で学んだこと

・名づけの功罪を理解したうえで、あいまいな自分をありのまま受け入れる。

・自分や相手を肩書などで決めつけず、一人の人間として向き合う。

・自分のズレに正直になり、子どもと大人の間を上手に漂って、生きていく。

「名前のない生きづらさ」のまとめ

この本は僕にとって人生の指針になりました。

野田さんの濃やかな感性に何度もはっとさせられて、そうだよなと、何度もうなりました。

忘れていた戸惑い、見過ごしてきた痛み、思いがけない希望。

本当にたくさんのことを考えさせられました。

きっとこれからも何度も読み直すと思います。

生きづらさを抱えるすべての人に読んでもらいたい名著です。

 

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